トム・サザーランド演出『タイタニック』で主演を務めた加藤和樹さん、特別インタビュー!

更新日:2016/3/25

加藤和樹

──『タイタニック』でトム・サザーランドさんの演出を受けられた当時の印象や特徴的なエピソードを教えてください。

トムは体も大きいんですけど、懐も大きい方です。すごく大胆なことを言うときもあるし、時にはすごく繊細なことを言うときもあります。彼が一番大事にしているのは、相手とか、自分の思いのエネルギーが向く方向性なんですよね。役者ってどうしても台詞を言うときや説明をするときに手をつけたくなったり、違うところを見てから台詞を言ったり、余計な動きを色々やりたくなるんです。けれど、そういうものを一切止めてくれって言われました。それでは、はたして見ている人に伝わるのかとトムに訊いたら「それだけで十分伝わるから」ってはっきりと言ったので、「なるほど」と腑に落ちました。エネルギーの向かう方向性がはっきりしている分、歌も含めて、自分の感情もストレートにズドーンと出せたんですよね。「シンプルが一番伝わるんだな」ということを改めて教えてもらいましたね。

──演技方法も含め、トムさんは論理的な説明の仕方をされるとお聞きしました。

『タイタニック』で初めて彼の演出を受けました。最初の稽古の時に皆で「『タイタニック』について」を学ぶ勉強会のようなものがあったんです。そこで映像を見て、当時何が起きて、どういう人たちがいたのかということをトムが一つ一つ事細かに説明してくれたんですね。そこで、彼自身が『タイタニック』という作品にどれだけ敬意を表しているのか、どれだけこの作品を愛しているかということがすごく伝わってきたんです。これだけ熱量のある人に応えないわけにはいかないという気持ちにさせてくれましたね。

──トムさんと加藤さんは同い年ですが、同い年の演出家に演出を受けるというのは、なかなかない機会ですよね。

そうですね。海外の演出家に演出を受けること自体初めてだったので、とても新鮮でした。オーディションで初めて彼に会ったとき、すごく熱を感じましたし、余計なものを見ない目をしていたんです。ストレートに「歌ってくれ!」って言われたことがすごく印象に残っています。大事なのはテクニックではなく、自分の中にある思い。それは芝居の基本なんですが、どこかでテクニックに頼ってしまったり、余計なことをしてしまっていた部分を、全部取っ払ってくれましたね。

──では、そのときの経験が今に活きていらっしゃるということですか?

芝居もそうですし、自分の音楽に対しても、やっぱりストレートに伝えるということ、余計なものをできるだけ削ぎ落としていくということは活きていますね。

──『グランドホテル』の作品についてお伺いします。本作には『タイタニック』で共演された方もたくさん出演されていますよね。

戸井(勝海)さんも正くん(藤岡正明)も、安寿(ミラ)さんもいるし、さらに光枝(明彦)さんがいるっていうのが、いいなぁ(笑)。いいなぁっていうか、光枝さんすごいなぁって。『タイタニック』では、トムが日本で初めて演出をしたということで、僕らはある意味、トムの一期生なんですよね。案外、初めてお仕事をしたということで、今回も起用されている部分もあると思うんですが、そういう信頼関係があってこそじゃないですか。それがとても羨ましくもあるし、このメンバーでこの作品を上演したときに、どういう見え方をするんだろうという楽しみはすごくありますね。
ウエストエンドで『タイタニック』が上演したときもそうだし、日本でやったときもですが、あまり大きな劇場ではなかったじゃないですか。でも、今回は梅田芸術劇場メインホールと赤坂ACTシアターという2つの大きな劇場で上演される作品の演出を、彼がどのように創り出すのか、すごく楽しみです。

──素顔のトムさんは、どんな方でしたか。

稽古場から帰るのが早いんです(笑)。日本に長く滞在するっていうのが多分初めてだったからかもしれないですけど、なんか子どもみたいでした。同い年ということもうなずけましたね。最初は、体も大きいし、演出家という立場でいろんな方々とお仕事をしてきたであろう佇まいでした。でも、実際はすごくお茶目だし、ジョークもすごく好きだし。とても大きいんだけど、とても可愛い人。ほんとにクマさんみたい。でも、すごく熱量がある人ですね。

──日本のことが大好きなトムさん。『タイタニック』のときは、日本を初めて体験されたということで、カンパニーは思い入れが深かったでしょうね。ディズニーランドにも行かれたとお聞きしました。

行っていましたね。トムが行きたいと言うので、「誰か行く人いませんか?」って言って、何人か行ったみたいです。僕はスケジュールが合わなかったので行けませんでした。後日、「ディズニーランドに行ったんだって?」と聞いたら、「そうなんだよー!」とすごく嬉しそうに、目をキラキラさせて話してくれて。何しに日本に来たんだと思うくらい(笑)。そういうリフレッシュの仕方も上手いですね。稽古はちゃんと時間どおりに終わって、ちゃんとリフレッシュするという。

──海外の演出家の方は仕事と休暇のメリハリがはっきりしていますよね。

ほんとにはっきりしてる。絶対居残りとかないですもん。僕らは個人的に残ったりしましたけど、それに付き合うということもあまりない。もちろん相談とかは聞いてくれるけど、そのまま居残って稽古というのはなかったですね。同年代の演出家の中でもすごく評価されている方ですし、本当に才能のある方だと思います。だから、もう少し自分が成長したら、その成長段階に合わせて、またお仕事でご一緒させていただけたらと思っています。

<加藤和樹プロフィール>
2005年ミュージカル「テニスの王子様」で脚光を浴び、2006年4月Mini Album「Rough Diamond」でCDデビュー。ドラマ「仮面ライダーカブト」「ホタルノヒカリ」「インディゴの夜」「赤い糸の女」などに出演するほか、「家庭教師ヒットマンREBORN」桔梗役や時代劇アニメ「義風堂々」石田三成役、ゲーム「戦場の円舞曲」などで声優としても活躍。
近年はミュージカル「ロミオ&ジュリエット」ティボルト役や、ミュージカル「レディ・ベス」主人公・ベスの相手役・ロビンをオーディションで射止めるなど大型ミュージカルにも出演。今年は、ミュージカル「1789 –バスティーユの恋人たち-」(主役・ロナン役)の出演を控えている。

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