16世紀末、男性権力社会だった頃、それをものともせずに、傑出した二人の女性が実在した。一人は、エリザベス一世。もう一人は、エリザベス女王に対峙する海賊の女王―グレイス・オマリーだった。女性の心の気高さにおいて、敢然と立つ二人の女性の愛と対決の物語。
当時イングランドは強大な王権の統治下にあった。一方隣国アイルランドは、イングランドの属州に取り入れられ、各部族の争いが続いていた。グレイス・オマリーは、オマリー一族の族長・ドゥブダラの娘であった。アイルランド気質同様に自由を好む奔放な女性。
船は、女性を乗せることを忌み嫌う。一族の軍船「海賊の女王」号は処女航海で、イングランドの戦艦との戦いとなる。船に紛れ込んだグレイスは恋人のティアナンとともに勇敢に戦う。
その勇敢さとリーダーシップは海賊たちの尊敬を集める。父のドゥブダラは、娘を船の船長として教育することにした。「パイレート・クィーン(海賊の女王)」の誕生だ。
男たちは海の女王としてグレイスを崇めた。
一方、ロンドンでは、女王エリザベス一世が即位した。彼女も女なるが故に国を治める資質が無いと思われることを嫌った。自らを女王と崇めることを臣下に求めた。
女王は配下のビンガム卿を、アイルランド総督に任命する。
一方、アイルランドでは、イングランドの圧制に対抗するため、オマリー一族が仇敵のオフラハティ一族との和を、娘と息子(グレイスとドーナル)の婚儀で図ろうとした。
アイルランドのしきたりにのっとり、三年と一日を過ぎれば二人は永遠の夫婦となることになる。しかしそれは、グレイスにとって、幼馴染のティアナンとの恋を諦めることを意味する。
戦いで瀕死の族長ドゥブダラは、グレイスを族長に指名する。婚約者ドーナルは、ドゥブダラ亡き後は、自分が族長として、二族を収めると思っていたので心外だった。
やがて、グレイスは船の上で男の子を出産する。グレイスは歌う、お前は希望、お前は祈り。
そのとき、イングランドの軍艦が迫り、戦場での白兵戦が始まる。敵の優勢に圧され降伏しようとするドーナルに対し、出産直後のグレイスは剣を取って立ち上がり、ティアナンと共に勇敢に戦い抜き、その姿に勇気を得た味方の軍は、大いに士気があがり敵を撃退する。
まだ、3年はたっていない。グレイスはドーナルと決別する。
ドーナルは敵のビンガム卿に接近しイングランドを使いグレイスを捕獲し、子供を連れ去ろうとする。かろうじて子供の身は、ティアナンが守り、ドーナルをティアナンは処罰する。
グレイスが敵の手に捕まり、7年がたった。アイルランドの族長たちも、次々とイングランドの前に屈服した。ただ一人屈服しないのは、ティアナンだけだった。ティアナンは、ビンガム卿を通してエリザベス女王に自分の命を差し出す代わりに、グレイスの釈放を請願する。母の顔を知らない息子のため、母の鎖を解くように要求する。
エリザベス女王は歌う、全てを奪い、獄につなぎ、自分を崇めるはずの一人の女を支えていたのは、一人の男だったのか。私には無くて、彼女にあるのは何…。
グレイスの代わりにティアナンは獄につながれる。解放されて、故郷に帰ったグレイスは、船に乗り、テムズを上りロンドンに向かう、死を賭して―。
愛する人のために、祖国のために、海の女王は陸の女王の元へ向かう。
一人の女として、もう一人の女の元へ。
16世紀、女性史に燦然と輝く、世紀の対決が始まろうとしていた。