※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
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脚本 | 木皿泉 |
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演出 | 内藤裕敬 |
原作 | 藤野千夜 小説「君のいた日々」(角川春樹事務所) |
出演 | 薬師丸ひろ子 細田善彦 菊池亜希子 菅原大吉/渡辺いっけい |
企画・製作 | 梅田芸術劇場 |
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【亜土夢 役】 細田善彦コメント
以前、木皿泉さん脚本のドラマ『Q10』に出演させていただいたのですが、どの役にも「名台詞」と呼べるような台詞があり、素敵な贈り物をいただいたようでとても嬉しかったことを覚えています。
今回は原作の小説がありますが、今日、稽古初日にいただいた冒頭のシーンだけでも、僕らには想像もつかないところから木皿さんは切り込んでくる。面白くて不思議で切なくて、まるで普通の読者のように先が気になって仕方がありません。
舞台はいつも死ぬほど緊張しますが、今の自分にしかできないこと、その瞬間瞬間を自分なりに楽しんで創っていけたらと思っています。
木皿さんから細田さんへのコメント
【三浦 役】 菊池亜希子コメント
『やっぱり猫が好き』や『すいか』など、放映後に後追いで見たドラマに加え、私は木皿泉さんのエッセイが大好きなんです。恥ずかしながら私も少しエッセイを書くのですが、言いたいのに自分では上手く言葉にできなかった気持ちが、木皿さんのエッセイを読むと、シンプルな優しい言葉で書いてある。体温が近い方だと勝手に思い込んでいたので、今回カンパニーに呼んで頂けたのはとても嬉しいです。
そのうえ大好きな木皿作品の中に存在し、木皿さんの言葉を自分が言えるなんて!
実際に演じるときどんな気持ちになるか想像もつきませんが、思い切って飛び込んでいきたいと思います。
木皿さんから菊池さんへのコメント
【春生 役】 渡辺いっけいコメント
まだ冒頭の10数ページを読んだだけですが、その中にも「ハッ」とさせられることがいくつもありました。劇中の春生と久里子さんに重ね、ついこのあいだ、カミさんと喧嘩したことを反省してしまったり(苦笑)。
状況によってシニカルになりもすれば、ハートを熱くしたり、涙もろくなったりもする。人間は矛盾を抱えた生き物で、だからこそ愛おしいのだと、木皿泉さんの作品を見たり読んだりしているとつくづく思います。役者として、木皿作品の台詞を喋るのはかねてからの念願でした。それだけでも充分嬉しいのですから、あとは真摯に芝居づくりを楽しめたら良いですね。
木皿さんから渡辺さんへのコメント
前作「すうねるところ」のこと、お互いのこと、そして「ハルナガニ」のこと、制作秘話が盛りだくさんです!
脚本:木皿泉コメント
Q.演出の内藤さんの魅力についてお聞かせください。
また、同じ関西ご出身ということで繋がりを感じられることはありますか?
内藤さん自身が作家なので信頼しています。若い時に初めてお会いしたのですが、今とてもいい年の取り方をされていると思いました。流れに逆らわない自然体というか。
内藤さんの芝居の面白さは関西的ですが、関西人の押しつけがましい部分は全くありません。サービス精神のみ。
そういうところは、私たちが目指すところと同じだと思っています。
Q.前作「すうねるところ」を振り返って、印象深い思い出はありますか?
たまたま観劇した日に、薬師丸さんが、最後のセリフを間違えたのですが、それがその役になりきっていたので、もうそのセリフ以外ないよなぁという気がしました。
自分の書いた世界が、人の血や肉になっている!といたくいたく感激しました。
Q.「ハルナガニ」というタイトルにしようと思われたのはどうしてですか?
能で使われる別れのコトバに「いずれ春永に」というのがありまして、それが美しく、はかなく、でも力強く、私たちはとっても好きです。
能は死者の話だし、今回はお芝居にいいかなと思いました。
Q.藤野千夜さんの原作を選ばれた理由や登場人物の魅力についてお聞かせください。
藤野さんの作品は、ずっと好きで、本当にうまいなぁといつも感心しています。
この原作も、細かいところがとても面白いのですが、何といっても設定がいいなぁと。
日常を切り取って見せるには、とてもいい話だと思います。
Q.舞台作品ということで、一番意識されることは何ですか?
実際に舞台を作り上げてゆく演出家や役者さんたちが味わう面白さは、とてつもないものなのだろうなぁと想像します。が、私たちはそこに飛び込む勇気はないので書くだけで、そんな雰囲気をおすそ分けして頂いている、という感じです。
舞台はやっぱりこわいです。まさに生きもの。なので、生きているものを提供したいと思っています。
Q.今執筆中でいらっしゃると思いますが、どのような展開になりそうか、少しだけ(構想だけでも)教えて頂けますか?
原作と違うのは、もっとドタバタするかな。それと、ジタバタもするかも。
頑張ります。
Q.出演者の皆様の印象はいかがですか?
薬師丸ひろ子さんには、前回以上に、自由に演じてもらえれば嬉しいです。
渡辺いっけいさんは、ようやく一緒に仕事ができる!という感じです。
菅原大吉さんも初めてですが、お二人とも大変うまい方なので、何を書いてもやってくれそうで安心しています。
菊池亜希子さんは、見た目で選んでしまったというか。すみません。今を生きている女性がいいと思ったので、いいなぁと。細川善彦さんは、テレビドラマでご一緒したのですが、その時の役作りが面白かったので、今回も工夫してくれるのでは、と期待しています。
Q.木皿さんの本やドラマのファンの方で、舞台は初めてという方へ、
メッセージをお願いします!
お金のいることで、しかもけっこうな金額で、心苦しいのですが、舞台でしか味わえない面白さを、ぜひ体験してみてください。前回観た人は、木皿さんは舞台に向いているかもと言っていました。たぶん、今回もそう言ってもらえるよう頑張りますので、よろしく。
演出:内藤裕敬コメント
Q.脚本の木皿泉さんの魅力についてお聞かせください。
また、同じ関西ご出身ということで繋がりを感じられることはありますか?
何度か神戸のお宅にお邪魔しましたが、木皿泉さんの男の方は毒舌家で、女の方はゲタゲタ笑う。まぁ、賑やかで、ほほえましいですよ。けれど、ちょっぴり油断がならない感じで、お二人とも、草食の蛇、という印象かな。
Q.前作「すうねるところ」を振り返って、印象深い思い出はありますか?
稽古がアッという間でしたね。気づいたらシアタートラムの初日だった。
よくでき上がったよね。それでも、ギリギリとか、ハラハラとかは無くて、何か、気分的には、皆さんのお陰で楽勝でした。
Q.「ハルナガニ」は原作を読まれて、どのような舞台にしようと構想中ですか?
木皿泉流のノゾキだと思います。ノゾキ見が言葉になって会話になった時、ノゾキをされた胸や頭や心が、どんな風な物語になるんですかね。
Q.出演者の皆様の印象はいかがですか?
薬師丸ひろ子さんは本質をいつも見つめているという印象。あと、彼女に競馬を教えたい。
渡辺いっけいさんは、大学時代、私のアパートに泊まりに来たっけなぁ。
菅原大吉さんは後輩のご主人だそうで、大学時代、奥様にはお世話になったので仕返しを。
細田善彦さんと菊池亜希子さんの若手2人は、いっけい君がビシビシやってくれるでしょう。
Q.お客様へメッセージをお願いします!
きっと面白いっスよ!!
【プロフィール】
【プロフィール】
【プロフィール】
【プロフィール】
【プロフィール】
短いトンネルを抜けて劇場に入ると、舞台上には、どこかで見たことのあるようなマンションの一室。人が暮らしている体温が感じられるのに、その部屋がどこか浮世離れして見えたのは、柱のように屹立した5本の鎖のせいだろうか。まるで、部屋が飛び去るのを繋ぎとめているようだ。
『ハルナガニ』。
1年と5ヶ月ぶりという意外な速さで木皿泉・脚本、内藤裕敬・演出、薬師丸ひろ子・出演のトリオが揃う舞台に再会できるとは嬉しい驚きだった。前作『すうねるところ』は吸血鬼3人(?)と、彼らに拾われ、育てられた青年という家族の物語。今回は両親と息子の家族、そこに両親の友でもある同僚らが絡んでいく。
夕暮れ。学校から帰宅した息子・亜土夢(細田善彦)が見たのは、フランク永井の「おまえに」を熱唱する父・春生(渡辺いっけい)の姿。母・久里子(薬師丸)の死から立ち直れずにメソメソし続ける父に呆れ気味の亜土夢だが、そこへ何事もなかったかのように久里子が帰宅する。亜土夢には普通に接する久里子の姿が春生には見えず、しかも久里子は「春さんは一年前過労死した」と言い切る。父母に互いを認めさせようと躍起になる亜土夢の努力空しく、夫婦はすれ違いを繰り返し、失った伴侶を恋しがるばかり。
だが“すれ違い”は次第に別の様相を見せる。夫婦は互いを認めながら“無視”しているような振る舞いに出るのだ。それは翌朝、夫婦の友であり春生の同僚・西沢(菅原大吉)と春生の部下・三浦(菊池亜希子)の訪問により、さらに露骨になり、もはや夫婦喧嘩の様相さえ呈する。
夫婦の諍いと息子たちの困惑にクスクス笑いながら、客席には無数の「?」マークが浮かんでいるようだった。「死んでいるのはどちら?」「そもそも死んだ人なんているの?」……etc。
舞台をラストまで観ても、無数の「?」を埋める解答が提示されることはない。ただ最終章では時が遡り、生まれたての息子を前に家族として歩む人生を不安に思う、若き春生と久里子のほろ苦い一夜が描かれる。
大切な人との別れを含め、人生に何が起こるかは誰にも分からない。だからこそ今この瞬間、目の前にいる人に対し、言わねばならないことは言っておかなければ。生活の中で当たり前のことを、当たり前に分かち合えるのは平凡ではなく幸せなのだ。
観劇後に頭を過ぎったことを、野暮を承知で言葉にするならこんな感じだろうか。もちろん木皿泉の台詞に欠片も野暮はなく、フワリと大切なことを心の奥底へ届けてくれる。
俳優の素の魅力を引き出す内藤演出のもと、泣き笑い怒りふて腐れる薬師丸は実にチャーミングで、少女の面影を残す愛くるしい母親が活き活きと存在していた。加えて渡辺の硬軟自在の演技が、夫婦ならではの当意即妙なやりとりを盛り上げる。絵に描いたように人の好い友人ぶりの菅原、天然素ボケの間(ま)で観客に一息つかせてくれる三浦を爽やかに体現した菊池も絶妙。そして振り回された果てに、劇世界を反転させるように悲痛な叫びを上げる細田には目を奪われた。
親しい隣人のような5人の登場人物を通し、不意に、世界の成立ちを見通せすような体験のできる舞台。観る人の数だけ浮かぶ「?」に、貴方の「?」を足しに行くのも一興ではないだろうか。
Text:尾上そら
脚本を書き上げた今の感想は?
書いちゃうと、自分たち夫婦のことを書いているような感じがしましたね。
夫婦の話なので、一番良く知ってる夫婦となると、やっぱり自分たちになるんです。
だから自分たちの話だなって。
あと言い換えると,存在とはなにか、ってことの話かな。
書いているときにおもっていたのも、自分たちのことも考えながら?
色々考えて試行錯誤したけれど原作があるので、最初は自分たち自身とはかけ離れた話として書き方で始めたと思います。だから密接な気はしなかったんですけど、書いてくうちにだんだんと近づいてきた。自分たちのことだなあ、みたいな。最後はそういう風に落ち着いちゃった感じでしたね。
原作を読むとどんな舞台になるか、まったく想像つかないと思うのですが、どんな構成にしているか少しだけ教えて下さい
前半はお客さんは知っているけれど、舞台の登場人物たちは気づいていない取り違えのギャクとかが色々あって、結構笑って頂けるのではないかと。
本当にパラレルワールドなんですよ。
長い人生の中で、はっと思いだす風景とか、本当に私たちがいるかどうかって、今の時代ね、よくわからないところあるじゃないですか。人に言われて、人が思うように望むままに、生きたりしているので。自分の意見とか出しにくい世の中だし。そんな中で、生きている実感みたいなものとは何だろうなと考えたら、意外とちょっとした事だったりするんです。なんか見た風景だったり、あの時見た、目の端に見えたもの、または本当に鳥が飛んでいく風景だとか。たぶんそういうことなのかなと思ったりするんですね。実は、そういうことを支えに私たちは生きているんじゃないか、というようなことを後半は書きたかった。
抽象的かなあ。あんまり言っちゃうと楽しくないと思うので、あとはお楽しみに。
原作を、選ばれた時点と、書き終えた今の印象の違いなど
原作を読んだ時に、あー、この夫婦ってお互い配偶者死んでて会えないんだけど、ほんとに一緒にいた時期があったんだなあ。それはとっても幸せな生活だったんだなあって。それがばーっと浮かび上がってくる感じがあったので、それを何とか芝居ふうできないかと思っていた。
原作はちゃんとエッチングとか、ちゃんと鉛筆で書いたような緻密な感じがするんですけど、私たちのはクレヨンとか墨でがーっと一筆でやりましたというような感じなので全然違う。素材は同じだけれど、全然違う感じなんです。
でも、おこがましいですが、小説の心はたぶん外してないと思うので、まだ藤野さんには聞いてませんが、怒られなかったらいいなと。
内藤さんへのメッセージ
ご結婚おめでとうございます。
ご結婚されないんだと長い間思っていたので、色んな人が皆ショックを受けてて(笑)
そんな中で今回夫婦の話を演出するのはすごいめぐり合わせというか、どんなふうにやるのかなって。今すごく幸せな段階の人だから 結婚に対して何も絶望的でシビアな意見とか持ってないと思うんだけど、そんな人がこの舞台作るんだって思ったら、どうなるのかすごく興味深いです。どんなふうに反映するのかなあって。
だからね、ニヤニヤしながら皆でみましょう!新婚さんはこんなふうに解釈してるんだ、こんなふうに考えてるんだって。皆さん観て下さい、今明かされる、内藤さんの新婚家庭!
お客様へのメッセージ
今時、決まった時間に、その場所に行くってことがどれだけエネルギーがいるか、色々調整があったり、大変なことじゃないですか。それをわざわざ観に来て頂けるっていうのは本当にありがたい。この脚本がどうなるか、私たち自身も全然わかってないので、「金返せっ」言われたら困るんですけど、もう逃げてます。皆さんから「面白かったわ」って言って頂ければ、また次も頑張ってできると思うので。それをいうとプロデューサーが喜ぶだけですけど。是非観て頂き、なんかくだらねえなあって、大いに笑って自分のこと言われてるかなって感じで、ぐっと来て頂いて、オレが、私が密かに思っていたことや、妬んでたこと、疎外感があったことなどが、いや、みんな思ってたことなんだなと。
帰ってまた明日も頑張って仕事や学校行こうって思ってもらえたら、これ以上嬉しいことはありません。これだけのことで私たちは、こんな苦しい仕事をしていると思います。そうなって頂けたら嬉しいです。
書店員さんからの応援メッセージ
紀伊國屋書店員さんによる、脚本 木皿泉さんの本のここが好き!
どうしようもない悲しみを、ゆっくり受け入れていく様をやさしく温かく描く木皿さんの作品が大好きです。
紀伊國屋グランフロント大阪店
堀江和子
木皿泉さんの文の優しさや、台詞の温かさにふれると「世の中まだまだ捨てたもんじゃない」っていう気持ちになります。何度読んでも新鮮。
紀伊國屋グランフロント大阪店
星真一
ゆるゆるとした人間関係の中で日常の何気ない事柄に気づかされる。そして、いつの間にか笑顔になっている。木皿さんの本にはそんな力がある
紀伊國屋グランフロント大阪店
奥野智詞
日々の何気ないことがとても愛しくて大切なものばかりなんだと気づかされ、あたたかく優しい気持ちになります。木皿さんの本は前向きすぎず、でも決して後ろ向きではない、少しずつ、少しずつ、幸せの方向へ導いてくれるお話ばかりです。
紀伊國屋グランフロント大阪店
このかわゆうこ