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舞台写真 & 映像
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撮影:岡千里
舞台映像
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コメント動画
古川琴音
青木 柚
飯田基祐
岡田義徳
簡 秀吉
山森大輔
佐藤寛太
麻実れい
コラム
演劇ジャーナリスト 伊達なつめ
今年6月の公開前から大きな話題になっているマイケル・ジャクソンの伝記映画『Michael/マイケル』(アントワーン・フークア監督)。脚本を手がけたジョン・ローガンは、『グラディエーター』『007 スカイフォール』など映画での活躍が目覚ましいけれど、個人的には、抽象絵画の巨匠マーク・ロスコと助手が芸術論を闘わせる濃密な二人芝居『RED』の劇作家という認識が勝る。実在した人物の心の闇を思索的に掘り下げてゆく作劇術に冴えを見せる作家だけに、MJへの視線も深く鋭いに違いないと、今からワクワクしている。

撮影:阿部章仁
そう期待が膨らんだのは、実は先日、日本初演となる『ピーターとアリス』の稽古を見学する機会に恵まれたから。このローガンの戯曲は2013年にジュディ・デンチとベン・ウィショー主演、マイケル・グランデージ演出によりロンドンで初演。戯曲に記されたローガンの作者メモによれば、1932年にロンドンの書店で開催されたルイス・キャロル展に『不思議の国のアリス』のアリスのモデルとして有名なアリス・リデルが訪れ、開会の辞を述べたそうで、その際、彼女の隣に『ピーター・パン』のモデルとして名高いピーター・デイヴィスがいたのだという。これは事実だそうで、この時二人の間でどんな会話が交わされたのかに興味を抱き、ローガンが想像の翼を広げに広げてみせたのが、本作というわけだ。ともに英国児童文学の金字塔の主人公モデル、という経歴を背負わされた人生。当時80歳で達観気味のリデル(麻実れい)に、まだ30代で重圧と格闘中のデイヴィス(佐藤寛太)が声を掛けたところから、ピーター・パン(青木柚)とピーター・パンのモデルのピーター・デイヴィス(佐藤)と『ピーター・パン』の作者ジェームズ・バリー(岡田義徳)、不思議の国に迷い込むアリス(古川琴音)とアリスのモデルのアリス・リデル(麻実)と『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロル(飯田基祐)。この三者三層が渾然一体となった世界が展開する。
バリーの偏愛ともとれるデイヴィス家の子どもたちとの関係や、アリス・リデル少女と暗室で二人きりになって以降、リデル家から遠ざけられたキャロル。さらに両ファミリーに重大な影を落とす戦争など、ローガンはモデルおよび作家たちの暗部に容赦なく踏み込む。戯曲は断片的で余白に富み、原作の一節が随所に挿入されたりもし、時空の飛躍も多い。一筋縄ではいかない構造ゆえに、演出の手腕に託される面がひときわ大きそうだ。
この日の稽古は、古川扮する不思議の国のアリスと青木扮するピーター・パンが、実在の人間たちの言動にズケズケと突っ込み、本性を暴こうと煽り出す場面から。演出の熊林弘高は空間を大きく使いながら、せりふの有無の別なく三層の人物たちを交錯させたりシンクロさせたりして、動線をつくる。すると断片が繋がるように流れができて、各登場人物の意思が目に見えてくるから不思議。顔の向きやちょっとしたしぐさの指摘まで、かなり精妙なつくり込み方だ。かと思うと、「稽古3週目に入ってみなさんの方が僕より役のことをよく分かってきているので、やりにくいと感じたら言ってもらった方がいい」と柔軟さもみせる。アーデルベルト・フォン・シャミッソーの『影をなくした男』からユングのヴォータン論、小津安二郎と溝口健二の俳優への対峙のしかたの違いから、今パリで上演中のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ演出による『ハムレット』の話まで、豊富な情報を提供しながら、穏やかに稽古を進めてゆく。
それにしても、ベテランの麻実れいや見るからにはまり役の古川琴音、文学座の個性派山森大輔は元より、キレッキレの青木柚やこれが初舞台という簡秀吉まで、キャストはみなことごとく演技のセンスがいい。特に初演ではベン・ウィショーが演じたピーターなど、複雑で難易度の高い役だと思うのだけど、佐藤寛太はいたって自然体に見え、逆に釘付けにされてしまうほど。キャスティングにおいては知名度に左右されず、「うまい人としかやらない」と断言する熊林の眼鏡にかなった俳優たちが頼もしい。多くの若い俳優のヴィヴィッドな潜在能力が開花した、2年前の『インヘリタンス-継承-』の成果を思い出した。
『Michael/マイケル』を楽しむためにも『インヘリタンス-継承-』級の興奮を味わうためにも、『ピーターとアリス』は必見と、改めて確信することができた。
用語解説
ピーター・パン
ピーター・パンはネバーランドに住む、永遠に大人にならない少年。
ある夜、ロンドンで暮らすウェンディと弟たちの前に現れ、みんなをネバーランドへ連れて行きます。
ネバーランドでは、迷子たち(ロストボーイズ)や妖精ティンカー・ベルといっしょに、冒険や遊びを楽しみます。しかし、海賊フック船長がピーターを狙い、忠実な部下のスミーとともに追いかけてきます。
そのフック船長は、入江のワニに命を狙われています。
危険や試練を乗り越えて、やがてウェンディたちは現実の世界に帰りますが、ピーターはネバーランドで永遠の少年として冒険を続けるのでした。
『ピーター・パン〜あるいは大人になろうとしなかった少年〜』から引用される劇中用語
- ネバーランド
- ピーター・パンが住んでいる、どこか遠くにあるはずの島。この島では、時間の流れが現実とは違い、年をとったり大人になったりすることがない。自由で楽しく、責任もなく、毎日が遊び。しかしその反面、成長すること、家庭を持つこと、誰かと長く生きていくことはできない。
- ピーター・パン
- 大人になりたがらず、永遠に子どものままの少年。ネバーランドに住み、空を飛べる。
- ウェンディ
- ロンドンに住む女の子でお話をするのがとても上手。弟たちに寝る前のお話を聞かせてあげる、やさしくてしっかり者の女の子。ピーター・パンと出会い、ネバーランドへ行く。しかしずっと子どものままでいるピーターと、いつか大人になる自分の違いに気づき、最後にはロンドンへ帰る決断をする。
- フック船長
(キャプテン・フック) - ピーターの宿敵。片手をワニに食いちぎられ、代わりに鈎爪(フック)を取り付けている恐ろしい海賊。
- ティンカー・ベル
- ピーターのそばにいる妖精。やきもち焼きだが情が深い。
- 入江のワニ
- フックの片手を食べたワニ。時計を飲み込んでおり、「チクタクチクタク」という音で、近付いてくるのが分かる。
- 迷子たち
(ロストボーイズ) - 現実世界で親とはぐれた迷子の少年たち。ネバーランドに住むピーターの仲間。
不思議の国のアリス
ある夏の暑い昼下がり、アリスは白ウサギを追いかけて穴に落ち、不思議の国へ迷い込みます。
そこでアリスは「私を飲んで」と書かれた瓶の飲み物を飲んで、体が大きくなったり小さくなったりしながら冒険を続けます。
途中で出会うのは、にやにや笑うチェシャ猫、お茶会をする狂った帽子屋や眠りネズミなど、奇妙な動物たち。
アリスは大きくなった自分の涙でできた「涙の池」に流されたり、わがままで怖いトランプのハートの女王に振り回されたりしますが、最後にすべては夢だったとわかり、現実の世界へ戻ります。
『不思議の国のアリス』から引用される劇中用語
- 不思議の国のアリス
- 白ウサギをおいかけて、不思議の国に迷い込んだ少女。へんてこりんで誰も答えを教えてくれない世界を、あきらめず考えながら冒険します。
- 白ウサギ
- アリスが不思議の国に迷い込むきっかけとなったウサギ。時計を持っていて、いつも急いでいる。
- チェシャ猫
- 謎かけばっかりで答えをくれないネコ。でも考えるヒントをくれる存在。
- 狂った帽子屋
- なぜか常にティータイムで、お茶を飲んでいるかなりへんてこな人。
- 眠りネズミ
- すぐ居眠りしてしまうネズミ(ヤマネのこと)。時々ねぼけた変な話をする。
- 賢いウミガメ先生
- ウミガメモドキの思い出話に出てくる海の学校の先生。
- “私を飲んで”
- アリスが見つける小瓶に書かれた言葉。中身を飲むと体が小さくなったり、大きくなったりする。
- 涙の池
- 大きくなったアリスが泣き過ぎてできた池。小さくなった時に溺れてしまう。
続編である『鏡の国のアリス』から引用される劇中用語
- 赤の女王
- チェスの駒のクイーン。駒だけど、アリスを引っ張って全速力で走ったり、ちょっと哲学的なこと言ったりする厳しい人。
- ハンプティ・ダンプティ
- イギリスの童謡・マザーグースに登場する、壁の上に座っている擬人化された卵のキャラクター。塀から落ちて壊れ、元に戻らなくなってしまう。
- ジャバウォックの詩(うた)
- これを読んだアリスが困惑するほどナンセンスな詩。作者キャロルのつくった混合語などで構成され、「ジャバウォック」と呼ばれる正体不明の怪獣との戦いを描く。
その他の劇中用語
- ドジソン牧師
- 『不思議の国のアリス』の作者、チャールズ・ラトウィッジ・ドジソンのこと。(ルイス・キャロルは筆名)彼はオックスフォード大学の数学教師だったが、当時その職に就くためには英国国教会の聖職者になる必要があった。
- 黄金の昼下がり
- キャロルが幼いアリスたち姉妹とボート乗りにでかけ、初めて『不思議の国のアリス』を着想して語った、夏の日の午後のこと。後にキャロルが詩の中でその午後を“黄金の昼下がり“と呼んだ。
- 『地下の国のアリス』
- 黄金の昼下がりに語られたお話を、最初に本としてまとめた時の名称。キャロルは手書きの原稿に自ら挿絵を描いてアリスに贈り、これが後の『不思議の国のアリス』となる。
- やかまし屋の御夫⼈
- トーマス・モートンの作品に出てくる口うるさい人物・グランデ夫⼈のこと。キャロルは自分の趣味や生き方を理解しようとしない世間の声の総称として、この御夫人の名をよく使ったようだ。
- ジェーン・オースティン
- 英国の小説家。まだ女性作家が少なかった18世紀から19世紀にかけて、女性の生き方を深い洞察力を持って描いた。
- 『モルグ』
- ピーターが家族やバリーの書簡をまとめて自分のコメントを入れた全六巻の記録。モルグは英語で死体安置所、または資料室という意味もある。
- ブラックレイクコテージ
- バリーが幼いピーターたち兄弟と夏を過ごしたサリー州にある山荘。ここでの海賊ごっこから、迷⼦たち(ロストボーイズ)を発想したと言われている。












