あらすじ
世紀の大発見をしたのは彼女。ノーベル賞をもらったのは彼ら。
女性科学者が殆どいなかった1950年代、ユダヤ系イギリス人女性科学者ロザリンド・フランクリン(板谷由夏)は遺伝学の最先端を誇るロンドンのキングスカレッジに結晶学のスペシャリストとして特別研究員の座を獲得する。当初、彼女は独自の研究を行う予定でキングスのポストを引き受けたのだが、同僚ウィルキンズ(神尾佑)は、出合い頭、彼女を助手として扱う。この雲行きの悪い出合いが、その後彼女たちの共同研究のチームワークの歪みを作るきっかけとなる。形式上、共同研究者となったロザリンドとウィルキンズだが、二人は常に衝突を繰り返す。助手で指導学生ゴスリング(矢崎広)がおどけた調子で2人の橋渡しを図っても一向に効果はない。ぶつかり合いながらも、ウィルキンズはロザリンドに密かな恋心を抱くようになり、幾度も関係の改善を試みるが敢えなく不毛に終わる。ロザリンドが唯一心を許すのは、彼女に憧れを抱く若きユダヤ系アメリカ人科学者キャスパー(橋本淳)である。この事実もウィルキンズにとっては面白くない。子供じみた嫉妬をあらわにするが、ロザリンドにはウィルキンズの秘めた思いは全く通じていない。こんな調子であるから、当然研究も早く進むはずがない。ロザリンドが特殊カメラを駆使して撮影するX線画像は明らかにDNA構造の謎解きの鍵を映し出しているのだが、協力体制の取れていないロザリンド&ウィルキンズチームはその謎の解明に到達できない。そうしている間、野心家のアメリカ人若手科学者ワトソン(宮崎秋人)とウィルキンズの旧友クリック(中村亀鶴)がチームを組み、DNAの謎の解明に挑み始める。ウィルキンズを通じて、ロザリンドのX線画像の情報を入手したワトソン&クリックチームは、彼女の写真と論文を元にして、ついにDNA二重らせん構造の発見に成功してしまうのだった…
文: 翻訳・ドラマターグ 芦澤いずみ
※本戯曲はイギリスで実際にあった二重らせん構造を巡る競争の史実をもとに書かれたフィクションであり、タイムライン、事実、出来事等は劇化の目的のため創作されている。
コメント
板谷由夏
初舞台という事になりますが、とにかく全身全霊注ぎ込むのみだと思っています。 今ある全てをロザリンドが研究に没頭したように、私もこの芝居に没頭したいと思います。
神尾佑
「想像力と革新」まさにこの芝居のテーマだと思います。内容も視覚的にも普通の演劇ではない、一筋縄ではいかない脚本を、いかに想像豊かに、そして革新的に我々が演じる事が出来るかという事が僕にとっての挑戦です。
矢崎広
ロザリンドという主人公の女性を通して人生を生きるひたむきさや、自分らしく生きるあり方を、この時代だからこそ感じられることがたくさん詰まっていると作品だと思います。
宮崎秋人
これまでは人に好かれる役が多かったのですが、今回は違う、自分にとっては挑戦になる役。20代後半に差し掛かる今、これから先どういう道を切り拓けるか、そのくらい自分にとっては勝負したい作品です。来年必ず最高のフォトグラフ51をお届け致します。
橋本淳
多種多様なシーンが連続して、切れ目なく進んでいくというところがとても魅力的で、緊迫感があるとてもスタイリッシュな作品です。
中村亀鶴
舞台には映像では伝わらない臨場感があります。今回はストレートプレイということで、歌舞伎とも異なった演劇のリアルさを体感していただきたいです。