藤原紀香が語る、舞台『罠』の魅力
「信じた瞬間、罠に落ちる」

2024年秋に上演され、完売御礼の人気公演となった舞台『罠』が、約1年半を経て早くも再演される。前回から引き続きエリザベート役を務める藤原紀香に、再演への思いや作品の魅力、深作健太演出の奥深さ、そして関西公演への期待を聞いた。
――舞台『罠』が早くも再演されます。改めて、今のお気持ちを聞かせてください。
藤原)私自身もこの作品に魅了された俳優の一人ですので、再演できることは本当に嬉しいですし、関西の演劇好きのお客様に観ていただけることを、心待ちにしています。前回の公演では、ありがたいことに満員御礼のお客様に喜んでいただきました。カーテンコールでは、お客様からの拍手や笑顔、〝ブラボー!〟の歓声をいただき、心から『罠』を楽しんでくださったことが伝わってきて、感極まりました。全国公演をまわっていても「もう一度観たい」と言っていただくことも多かったのですが、お切符は完売していました。お客様一人ひとりの声が、今回の再演につながったのだと思い感謝しています。再演だからこそより深く味わえることもあると思いますし、前回の経験を生かしながら、さらにブラッシュアップできるよう稽古に臨んでいます。
――前回で特に印象に残っていることはありますか。
どの劇場に行きましても、とにかくお客様に喜んでいただけたことですね。休憩なしの約2時間の舞台なので、お客様も、かなり集中して観てくださっていました。会場全体の空気が張り詰めていました。稽古中から本番が終わるまで集中し続けていた記憶があります。役に入ると自身もずっと、ヒリヒリしていたという感覚が強いです。やり甲斐のあるお役、そして緻密に練り上げられたこの脚本に出会えたことは、本当に幸せなことだと感じています。
――「ヒリヒリ」というのは?
1960年頃のフランスの空気を背景に持つこの作品は、単なる謎解きではなく、人間心理の幾重もの層を描いています。『罠』で感じる“ヒリヒリ”は、その心理戦が生む熱量なのかもしれません。この作品では、言葉だけでなく、沈黙や視線までもが物語を動かしていきます。ですから舞台上では、常に神経が研ぎ澄まされている状態で、一瞬たりとも嘘がつけない。その極限まで集中した感覚を、私は“心がヒリヒリする”と表現しているのだと思います。でも、そういう張り詰めた時間に身を置くことも、私にとってはこの作品の大きな魅力なんです。
――作品の魅力は、どんなところにあると思いますか。
サスペンスでありながら、ただの謎解きではない。嘘や仮面、事件だけではない。いろんな意味での〝愛〟の要素も大きいです。単なるサスペンスだけではない、フランス作品ならではのエスプリも感じていただければと思います。
観客の皆さんが、何か一つを信じた瞬間、そこからもう“罠”が始まっているかもしれません。一度観ると〝沼〟にハマり、今度は、それぞれのキャラクターの視線や表情、一瞬の動きの意味の答え合わせがしたくなる。伏線回収したくなる作品だからこそ、長い年月を経ても世界中で上演され続けているのだと思います。私自身もこの作品のファンです!
――再演ではまた違う楽しみ方ができそうですね。
2度目の方は、後方から舞台全体を観るのも面白いと思います。6人それぞれを一人ずつ追って観られますし、まったく違う発見、違う景色があるはず。それくらい細かく作り込まれている作品です。
――深作健太さんの演出については、どのように感じていますか。
キャラクターそれぞれが、頭の中で何層もの自分を作り上げなければならない。そういうことを深作先生から徹底的に叩き込まれて、前回の公演に臨みました。一つのセリフ、一つの動きが誰に向けられているものなのか、その配分が、都度、違ったり。
深作先生と細かく確認しながら作っていった記憶があります。また、「『罠』が初演された前後の時代背景を知り、その感覚を纏うことも大事にして」と言われています。
お客様も、この作品の背景にある時代や空気を理解したうえで観ると作品の深さがまったく違って見えてくると思います。あ、でもけっして あらすじは調べてこないでくださいね。面白さが半減します(笑)
――エリザベートという役を演じるうえで、大切にしていることは何ですか。
エリザベートは、魅力的で、どこか引き込まれる存在でありたいと思っていますし、物語の空気を動かす人でもあります。夫・ダニエルへの〝愛〟は、都度その形は変われどもいつも心にあります。ただ、多くを語りすぎると面白くない役でもあるんです。だからこそ、見ている方の想像を引き込み、目が離せないキャラクターにしたいと思っていました。
ヘアやメイク、衣装についても、深作さんやクリエイターの皆さんと話し合いながら当時の空気を纏えるように作っていきました。その時代のレトロ感も大切にしました。
このお役は、私にとってものすごくやりがいのある役です。この役が自分に回ってきたことは、本当に幸せなことだと思っています。
――舞台『忠臣蔵』でも共演された上川隆也さんの印象を教えてください。
『魔界転生』や『忠臣蔵』でもご一緒しましたが、上川さんはとても知的で、素敵な方です。台詞はもちろん、その前後の“間”や空気のつくり方まで本当に繊細で、共演していて大変刺激をいただきます。『罠』のように、一瞬の間や視線、言葉の裏側にまで意味が宿る作品では、上川さんの集中力や精度に、こちらも自然と研ぎ澄まされていく感覚があります。そして、上川座長がいてくださることで、安心して、のびやかにお芝居に向かえる気がしています。今回またご一緒できることを、大変ありがたく思っています。
――看護師のベルトン役が須藤理彩さんです。新たなキャストが加わることへの期待感を教えてください。
相手役の方が変われば、そこにまた新しい反応が生まれます。今回、須藤さんが参加されることで、稽古場にもまた違った空気が流れています。
須藤さんご自身の魅力やキャラクターを活かした、新たな“ベルトンさん”が登場していると思います。
新しい座組で、どんな『罠』になっているのか。そこも楽しみにしていただけたら嬉しいです。
――舞台ならではの面白さは、どんなところに感じていますか。
映像ももちろん好きですが、舞台には舞台ならではの“生きた時間”があります。お客様と同じ空間で、同じ空気を吸い、同じ時間を共有しながら物語が進んでいく。その緊張感に、自分自身も鍛えられているような感覚があります。私は、その空気感がとても好きなのだと思います。共演者の呼吸やその日のコンディションによって、お芝居は毎回少しずつ変わりますし、カーテンコールでいただくお客様の反応が、また明日への栄養になるんです。
劇場は、一期一会の時間が生まれる、かけがえのない場所です。舞台期間中は、「ああ、生きているんだ」と強く感じます。
――最後に、関西のお客様へメッセージをお願いします。
関西のお客様は、「思いきり楽しみに来たで!」という意気込みを感じるほど、作品を深く観てくださる方が多いと感じています。『罠』は、一瞬の視線や沈黙にも意味が宿る、とても濃密な作品です。2時間ノンストップの“サスペンスジェットコースター”です。第一場から一気にその世界へお連れします。登場人物たちの思惑や感情が絡まり合い、火花を散らしながら、大きなうねりとなって皆様を包み込んでいく――そんな2時間です。何かを信じた瞬間、罠に落ちる――。ぜひ、思いきり“罠”にかかりにいらしてください。
森ノ宮ピロティホールでお会いできますことを、心より楽しみにしております。
取材・文:岩本和子
hair&make:長谷川清美
styling:今井聖子(Canna)
衣装:TAE ASHIDA