公演詳細

おそるべき親たち
原作:“LES PARENTS TERRIBLES ” by Jean COCTEAU

※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

  • ジャン・コクトー委員会会長ピエール・ベルジェ氏提供
天才コクトーの傑作が圧倒的な顔合わせでよみがえる!展開から目が離せない、手に汗握る人間模様
この家族の話、のぞいてみませんか!?
この作品を、このキャストで観る贅沢!
演劇好きなら、この顔合わせを見るだけでゾクゾクするだろう。しかも天才ジャン・コクトーの傑作だ。母子相姦が匂う異常な親子関係に、同居する伯母は父の元恋人、その父の愛人が息子の恋人…。ひとつ屋根の下に愛と嫉妬と嘘と憎しみが渦巻き、それぞれが揺れ動く感情をぶつけ合う。濃密にスリリングに展開する家族劇は、最高のアンサンブルを得て、息詰まるほどの迫力で観客を引き付ける。そして同時に、登場人物たちが必死なほど笑ってしまう滑稽さも。まるで「他人の家庭を覗き見するような」おもしろさだ。母親を演じた麻実れいは、2010年の上演で第18回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。演出の熊林弘高は、毎日芸術賞千田是也賞を受賞した。脚本、キャスティング、おもしろさ。三拍子揃った上質な舞台は、なかなか出会えない。演劇の醍醐味、本作で存分に味わってほしい。

ジャン・コクトー
詩人・小説家・劇作家・評論家、そして画家で映画監督。この天才ジャン・コクトーの、没後50年の節目に上演する本作。1939年、既に劇作家として著名だったコクトーが、自身と母親の関係を念頭に執筆した。時代の閉塞感を投影し、人と人との様々な愛情や家族の在り方を、今の私たちに鋭く問いかけてくる傑作戯曲だ。

ストーリー
イヴォンヌは一人息子ミシェルを溺愛している。ミシェルに恋人ができて、彼女は怒りをあらわにする。ミシェルは同居する叔母レオのすすめで、父ジョルジュに相談する。息子の恋人の名を聞いたジョルジュは絶句する。マドレーヌは、彼の恋人だった・・・。

※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

公演概要

ジャン・コクトー
翻訳・台本 木内宏昌
演出 熊林弘高
出演 佐藤オリエ 中嶋しゅう 麻実れい 満島真之介 中嶋朋子
著作権代理 ㈱フランス著作権事務所
主催 梅田芸術劇場

キャスト

  • 写真

    佐藤オリエ
    <コメント>
    お客様が喜んでくださることが宝物。怖い役はけっこうおもしろいですよ。

  • 写真

    中嶋しゅう
    <コメント>
    役者冥利に尽きるような役ですね。芝居を完成させるのはお客様の力です。

  • 写真

    麻実れい
    <コメント>
    豊かで深いコクトーの世界。他人の家庭を覗き見るような喜びがあります。

  • 写真

    満島真之介
    <コメント>
    この舞台をぜひ“目撃”してほしい!ずっと記憶に残る作品になると思います。

  • 写真

    中嶋朋子
    <コメント>
    劇場に来ていただければ、間違いなく手放しで楽しめる作品だと思います。

インタビュー

TCA PRESS2月号に、中嶋朋子さんのインタビューが掲載されました!

チケットぴあに、麻実れいさんと熊林弘高さんのインタビューが掲載されました!

麻実れい インタビューはこちら


熊林弘高 インタビューはこちら

レポート

東京初日レポート

俳優5名のアンサンブルに鳥肌立ちのすごい舞台!
~「おそるべき親たち」東京初日レポート~

3月2日(日)、東京芸術劇場シアターウエストで「おそるべき親たち」が開幕した。
作品はジャン・コクトーの名作で、没落へと向かうブルジョワ家族をめぐる物語。
出演は、佐藤オリエ、中嶋朋子、満島真之介、中嶋しゅう、麻実れい。
前評判は聞いていたが、期待を越えるレベルの高さとその迫力に圧倒される舞台だった。
大阪公演を控え、ひと足先に観劇した東京公演の初日レポートをお届けしよう。

暗い劇場内に、少し高さを感じる丸い舞台。そこには、無造作に積まれたクッションと、複数のろうそくが2か所に置かれている。薄暗い闇の中から、人影の気配が。母親イヴォンヌ(麻実れい)が、けだるそうにクッションの山に横たわる。ハエの羽音。ぼんやりとしか見えない。何が起こる? 息を詰めて目を凝らした瞬間、場内アナウンス。いきなり観客の心を乱す幕開きだ。

低血糖のイヴォンヌを介抱する姉レオ(佐藤オリエ)と、おろおろする父親ジョルジュ(中嶋しゅう)。全員が黒い衣装。ろうそくのぼんやりした明りの中、初めて外泊した息子ミシェル(満島真之介)をめぐる会話に、ゆっくりと床が回り始める。そこへ真っ白の衣装を身に着けたミシェルが帰宅。舞台がパッと明るくなる。母親をソフィーと呼び、キスしてはしゃぐミシェル。なんかヘンだ、この母子…。

レオは昔、婚約中だったジョルジュをイヴォンヌに取られ、今でも彼を愛しながらひとつ屋根の下に住む。イヴォンヌは夫より息子を溺愛し、夫には愛人がいる。なんかおかしい、この家族…。


ミシェルの初恋宣言に動転するイヴォンヌ。息子の恋人が自分の愛人だと知るジョルジュ。その狼狽ぶりに客席から笑いが起こる。醒めた目で状況を見つめるレオが不気味だ。レオは提案する。みんなでミシェルの恋人・マドレーヌ(中嶋朋子)に会いに行こう、と。そう、ジョルジュがマドレーヌと密会していた愛の巣に…。

1幕が終わり客席に明りがつく。一瞬の間の後、観客がみな、ふぅ~っと息を吐き、ざわめく。登場人物の濃密な関係と心の動きに、思わず息を詰めて観ていたのだ。2幕はもう、そのスリリングな展開から目が離せない。でも緊張しながら笑ってしまう。かき乱される感情。そして、衝撃のラストへ。

俳優たちのアンサンブルは、唸るほど見事だ。さらに、最小限の舞台セットで登場人物の揺れる心を克明に見せつけ、観客の感情のうねりを増幅させる熊林弘高の巧みな演出。そしてやっと理解する。一見、三面記事を思わせるようなドラマでありながら、おぞましくも人間の奥底をえぐるような物語。これは天才コクトーだからこそ、構築できた倒錯の世界なんだと。

「すごい舞台、観た…」。

観終わって、きっと誰もがそう思うはず。15分休憩をはさみ、約2時間半。共有した時間は、その瞬間に消え去ってしまう生の舞台。が、その重力感ある印象は、ボディブローをくらったように心に響き、記憶に残り続ける。こんな演劇体験は、そうざらにできるものじゃない。ドラマシティなら、オペラグラスで観るのもいいだろう。覗き見る、という行為はこの作品にふさわしい。
演劇通をも唸らせるすごい舞台。もうすぐドラマシティにやってくる。

演劇ライター 高橋晴代

舞台写真

撮影:引地信彦