※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。
作 | ジャン・コクトー |
---|---|
翻訳・台本 | 木内宏昌 |
演出 | 熊林弘高 |
出演 | 佐藤オリエ 中嶋しゅう 麻実れい 満島真之介 中嶋朋子 |
著作権代理 | ㈱フランス著作権事務所 |
主催 | 梅田芸術劇場 |
佐藤オリエ
<コメント>
お客様が喜んでくださることが宝物。怖い役はけっこうおもしろいですよ。
中嶋しゅう
<コメント>
役者冥利に尽きるような役ですね。芝居を完成させるのはお客様の力です。
麻実れい
<コメント>
豊かで深いコクトーの世界。他人の家庭を覗き見るような喜びがあります。
満島真之介
<コメント>
この舞台をぜひ“目撃”してほしい!ずっと記憶に残る作品になると思います。
中嶋朋子
<コメント>
劇場に来ていただければ、間違いなく手放しで楽しめる作品だと思います。
暗い劇場内に、少し高さを感じる丸い舞台。そこには、無造作に積まれたクッションと、複数のろうそくが2か所に置かれている。薄暗い闇の中から、人影の気配が。母親イヴォンヌ(麻実れい)が、けだるそうにクッションの山に横たわる。ハエの羽音。ぼんやりとしか見えない。何が起こる? 息を詰めて目を凝らした瞬間、場内アナウンス。いきなり観客の心を乱す幕開きだ。
低血糖のイヴォンヌを介抱する姉レオ(佐藤オリエ)と、おろおろする父親ジョルジュ(中嶋しゅう)。全員が黒い衣装。ろうそくのぼんやりした明りの中、初めて外泊した息子ミシェル(満島真之介)をめぐる会話に、ゆっくりと床が回り始める。そこへ真っ白の衣装を身に着けたミシェルが帰宅。舞台がパッと明るくなる。母親をソフィーと呼び、キスしてはしゃぐミシェル。なんかヘンだ、この母子…。
レオは昔、婚約中だったジョルジュをイヴォンヌに取られ、今でも彼を愛しながらひとつ屋根の下に住む。イヴォンヌは夫より息子を溺愛し、夫には愛人がいる。なんかおかしい、この家族…。
ミシェルの初恋宣言に動転するイヴォンヌ。息子の恋人が自分の愛人だと知るジョルジュ。その狼狽ぶりに客席から笑いが起こる。醒めた目で状況を見つめるレオが不気味だ。レオは提案する。みんなでミシェルの恋人・マドレーヌ(中嶋朋子)に会いに行こう、と。そう、ジョルジュがマドレーヌと密会していた愛の巣に…。
1幕が終わり客席に明りがつく。一瞬の間の後、観客がみな、ふぅ~っと息を吐き、ざわめく。登場人物の濃密な関係と心の動きに、思わず息を詰めて観ていたのだ。2幕はもう、そのスリリングな展開から目が離せない。でも緊張しながら笑ってしまう。かき乱される感情。そして、衝撃のラストへ。
俳優たちのアンサンブルは、唸るほど見事だ。さらに、最小限の舞台セットで登場人物の揺れる心を克明に見せつけ、観客の感情のうねりを増幅させる熊林弘高の巧みな演出。そしてやっと理解する。一見、三面記事を思わせるようなドラマでありながら、おぞましくも人間の奥底をえぐるような物語。これは天才コクトーだからこそ、構築できた倒錯の世界なんだと。
「すごい舞台、観た…」。
観終わって、きっと誰もがそう思うはず。15分休憩をはさみ、約2時間半。共有した時間は、その瞬間に消え去ってしまう生の舞台。が、その重力感ある印象は、ボディブローをくらったように心に響き、記憶に残り続ける。こんな演劇体験は、そうざらにできるものじゃない。ドラマシティなら、オペラグラスで観るのもいいだろう。覗き見る、という行為はこの作品にふさわしい。
演劇通をも唸らせるすごい舞台。もうすぐドラマシティにやってくる。
演劇ライター 高橋晴代