進化するミュージカル『タイタニック』待望の再演!

史実に基づいた壮大な歴史劇の魅力

日本では『タイタニック』と聞けば大ヒット映画を思い出すことが多いと思いますが、映画はあくまでタイタニック号の沈没という歴史上の出来事をベースに作り上げたフィクションです。
一方、ミュージカル『タイタニック』は史実に基づいて物語が作られており、登場人物はすべて実在の人物、あるいはそれをベースに作られた人間たちであり、壮大な歴史劇であると言えます。

2015年 日本公演/加藤和樹

演出家トム・サザーランドの「船の悲劇ではなく、実際にそこに生きた人々の物語である」という考えにより、それぞれの『人間・人々』や『人生』に焦点を当てよう、という意図のもとに、台本への変更も細かく行いながら再構成されました。
この事故のあとで船舶の安全基準が飛躍的に向上されたことに着目し、「誰かに非があるのではなく、それぞれが自分の出来るべストを尽くした結果、偶然が重なりあって起こった悲劇である」と事件全体を捉え直しました。
装置を絢爛・大掛かりに作ってしまうと『船』そのものに必要以上に観客の注意が向いてしてしまうことを避けるために徹底的に削ぎ落とし、基本的に舞台奥のバルコニーと可動式の階段のみ、というシンプルなものにしています。

本作品は一人のキャストが一等客、三等客、船員など、早替えをしながら演じ分けています。これは「タイタニック号の沈没は階級社会の終焉である」という演出家の解釈に基づいたシステムで、「着ている服が違うだけで、一等客も三等客も、中身は皆同じ一人の人間なのだ」というメッセージが込められています。

STORY

Act.1

タイタニックの船主J・ブルース・イスメイは、未曽有の沈没事故の責任を問う裁判の席で、人類がこれまで築き上げてきた偉大な建造物の数々に思いを馳せる。かつては作成不可能と思われた豪華客船RMS タイタニックは、その中でもすべてを凌駕するものだった。

サウスハンプトンの波止場に到着した機関士フレッド・バレットは、タイタニックのあまりの素晴らしさに驚嘆する。そこで彼は、見張り係フレドリック・フリートと無線係ハロルド・ブライドに出会う。「夢の船」を前にして驚きの声を上げる三人。やがて一等航海士マードックと二等航海士ライトーラーを始めとする船員たちも到着し、その中にタイタニックの船主イスメイと設計者トーマス・アンドリュースと船長E・J・スミスの姿がある。この「世界最大の可動物」を前に、それに関わっている自分たちを祝福し合う三人。

遂に出航の時が訪れタイタニックは大海原へと走り出し、そこにいるすべての人間が、その船旅の安全を祈るのであった。

イスメイはスミス船長に「タイタニックをニューヨークに早く到着させたい」と告げるが、処女航海は安全を第一に考えるべきだ、とアンドリュースが主張。ふたりの口論を聞いたうえで、船のスピードを少し上げるようにと指示する船長。ボイラールームで働くバレットはその指示を聞き、こんな新しい船で無理をするのは危険だと感じつつも、しぶしぶと命令に従う。

二等客室では、アリス・ビーンが一等客たちの壮麗さに憧れている一方で、彼女の夫である金物屋店主エドガー・ビーンは自分たちの今の生活で充分満足なのである。アメリカでジャーナリストになることを夢見るチャールズ・クラークは婚約者のキャロライン・ネビルと旅をしている。キャロラインの父がふたりの婚約を認めなかったため、駆け落ちをしたのだ。ふたりの間の階級差に縛られ苦悩するチャールズに、キャロラインは優しく「本当に大切なのは、ふたりの絆。私に必要なのは、あなただけ。」と諭すのだった。

三等客室、偶然にも同じケイトという名前を持つ三人のアイリッシュの娘たち(ケイト・マクゴーワン、ケイト・ムリンズ、ケイト・マーフィー)が、他の乗客たちと共に、アメリカで待つ夢の暮らしを語り合う。マクゴーワンはその中のひとりの若者ジム・ファレルに恋をする。

イスメイから「船の名声を上げるために、もっとスピードを上げろ」という要求が出され、アンドリュースが反対するにも拘らず、船長はこれを呑んでしまう。その頃、無線室ではブライドが客から託された数々のメッセージを送信する作業に追われていたが、恋人へのプロポーズを送ってくれというバレットの頼みに応える。

日曜の朝、ミサに出席した一等客たちは、その後、デッキの上でハートリー率いる楽団が奏でるラグの調べに乗せてダンスを楽しむ。やがて日が傾くに連れて気温が下がり、見張り係のフリートは天気のせいで氷山を見つけることが難しいことに気が付く。
すると突然、眼前に氷山が現れ、慌ててブリッジに警告を発するフリート。それを聞いたマードックも緊急回避の指示を出すが、時すでに遅く、タイタニックは氷山に接触してしまうのであった。

Act.2

ブリッジに到着し状況を把握した船長は、救命胴衣を着けるようにという指示を乗員乗客に出し、遭難信号を出すようにブリッジに命じる。船が受けたダメージの度合いを調べるように頼まれたアンドリュースは、船体の損傷に船は持ち堪えられずタイタニックはやがて沈むと、船長とイスメイに告げる。だが、船の上にある救命ボートには乗員乗客の半数にも満たない人数しか乗ることができない。女性と子供たちが救命ボートへと誘導される中、男性は船上に残るように指示が出される。彼等は、愛する者たちとの別離を覚悟するのだった。

ベルボーイが、すべての救命ボートが海に出たこと、そして残った乗客たちは既に覚悟を決めていることを船長に報告する。事故の全責任は自分にあると話すマードックに「今まで自分の担当した航海で事故など起きたことがなかった」と哀しげに語る船長。そんな彼を見て、エッチスは船長になることの責任の重さを歌う。その頃、夫の元を去ることを拒否したアイダ、そしてイシドールの夫妻は、決して絶えることの無いお互いへの愛を静かに噛み締めていた。

その朝早く、カルパチア号に救助された生存者たちは、静かにタイタニック号の悲劇を語り、沈んでいった船、死んでいった人々を悼む。海に散った愛する人々、波間に消えた儚い夢。彼等にいつか再び巡り合える日が来ることを、みな静かに願うのだった。

TITANIC(2013年公演)イギリス劇評より

「このトム・サザーランドによって演出された最高の作品の中のすべてのシーンと歌は、浮かび上がる真実と共に輝いていた」

A Younger Theater

「トム・サザーランドの作品は全くもってセンセーショナルである」

The Londonist

「サザークプレイハウスはミュージカルのリバイバル上演に高い評価を得ているが、その素晴らしい公演の多くが今回も感動的な演出をしたトム・サザーランドの演出によるものだ」

The Mature Times

「この15年で書かれたアメリカのミュージカルの中で最高の作品だ。大勝利である!高みへと向かう楽曲は最高傑作だ」

The Spectator シェリダン・モーリー

「タイタニックはまさにセンセーションと言うべきであるように瞬く間にヒットとなり、タイムズ、ガーディアン、デイリー・テレグラフ、インディペンデント、オブザーバーやサンデーエクスプレスなどの主要な劇評すべてで4つ星を獲得し、全公演が100%売り切れとなった。観客が観劇後にすぐ2回目の予約を入れたのだ。マジック・ラジオはタイタニックを『2013年夏の最も入手困難なチケット』と称した」

Maury Yeston News

[演出] トム・サザーランド(Thom Southerland)

演出 トム・サザーランド(Thom Southerland) ©高橋エイジ

イギリス チャリングクロスシアター芸術監督。
トム・サザーランドは今イギリスで活動中の最もエキサイティングな若手演出家である。

イブニング・スタンダード・アワードに3年連続でノミネートされ、2011年のオフ・ウエストエンドシアターアワード(The Offies)では「Me and Juliet」(フィンボローシアター)で最優秀演出家賞を獲得。
サザークプレイハウスで上演された「タイタニック」ではWhat’s On Stageアワードやオフ・ウエストエンドシアターアワードでの最優秀作品賞をはじめとする多くの賞を受賞し、「グランドホテル」でもオフ・ウエストエンドシアターアワードでの最優秀ミュージカル作品賞を受賞。

「タイタニック」と「グランドホテル」の両作品は日本でも上演され、高い評価を受けた。また日本での最新作「パジャマゲーム」では古典的なコメディミュージカルを革新的な演出により新たに甦らせ、大好評を得た。
2016年よりロンドン中心部にあるチャリングクロスシアターの芸術監督に就任。

ミュージカル「タイタニック」全英ツアー

トム・サザーランド演出版「タイタニック」はイギリスでも非常に高い評価を得ており、2018年3月から8月にかけて全英ツアーを実施。その勢いのままに日本での再演が上演されます。
全英ツアーの詳細はこちら

トム・サザーランドより、日本の皆さまへ

I am delighted to be coming back to Japan to work on TITANIC, the show that first brought me to Japan. I was so pleased that audiences took the show to heart in 2015, and I am thrilled that we have another opportunity to share Maury Yeston’s genius musical again, and this time in a production with even more scale, hope, dreams and aspirations. Stephen Sondheim is quoted to have said that ‘a musical is never finished’. Having been able to have had the good fortune to work on TITANIC again, the entire Japanese creative team, producers and I regrouped to ask ‘how can we give the audience an even better experience’ . You will be able to see the result this October. With a new expanded scenic design and staging, the show will embrace many more possibilities in its larger venue, and we hope that it will have an even greater impact than in 2015. It has been my privilege to work on this show in several countries, but none was as special as working in Japan. Having been inspired by the incredible Japanese actors, creatives and producers, I know that TITANIC 2018 will be bigger and better than ever.

再び日本へ戻り、この国へ初めて来るきっかけとなった作品『タイタニック』に取り組めることを、とても嬉しく思っております。2015年には、有り難いことに観客の皆様がこの作品を深く心に留めてくださいました。モーリー・イェストンの天才的なミュージカルを再び共有できることを大変嬉しく思いますし、今回のプロダクションには更に大きなスケール、希望、夢、そして憧れが加わっております。スティーブン・ソンドハイムは、「ミュージカルが完成することはない」と言ったそうです。今回、幸運にも『タイタニック』に再び取り組むこととなり、日本のクリエイティブ・チームやプロデューサーの皆様と再び集まり、「更なる素晴らしい体験をお客様にしてもらうためには何ができるか」とお互いに問いました。その結果を、今年10月にご覧いただけると思います。美術デザインとステージングに更なる広がりが加わり、大きくなった空間は新たな可能性を多く生みました。これにより、2015年以上に大きなインパクトを残すことができると期待しております。この作品を様々な国で上演できたことは大変光栄ですが、日本で仕事するほど特別なものはありませんでした。素晴らしい日本の役者、クリエイター、プロデューサーより発想を得て、『タイタニック2018』は史上最大・最高なものとなることは間違いありません。

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