絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』

第一弾『ハムレット』

父を殺され母を后に迎えた叔父への復讐、恋人を狂い死にさせ、恋人の兄が妹の仇をとる決闘の中、毒の剣で刺し違え命を落とす”人生苦行”の王子、ハムレット。それらの登場人物がきじるしの王次(大貫勇輔)、蝮の九郎治(阿部 裕)、お冬(綾 凰華)に重なります。

第二弾『オセロー』

キプロス島総督に任命された将軍オセロー。妻デズデモーナを連れて任地に赴くが、自身の待遇に不満を抱く部下イアーゴがデズデモーナの不義をでっち上げ、騙されたオセローは嫉妬のあまり妻を殺してしまう。全てが陰謀だったと知ったオセローは妻の後追い、自らの命を絶つことにー。
尾瀬の幕兵衛(章平)、佐渡の三世辞(浦井健治)、お里(土井ケイト)の3者にはオセローを彷彿とさせるシーンが……。

第三弾『リア王』

ブリテンのリア王は退位し、国の領土を三人の娘ゴネリル、リーガン、コーディリアに分け与えることに。王を一番慕うコーディリアはお世辞が言えず怒りを買い、王に勘当される。しかし、領土を譲り受けた姉二人は父を疎んじ追放する。荒野を彷徨うリア王は、フランス王に迎えられたコーディリアと再会する。
本作では、鰤の十兵衛(中村梅雀)、お文(瀬奈じゅん)、お里(土井ケイト)、お光(唯月ふうか)のモデル。物語の冒頭がオマージュとなっており、「こう出りゃそう出たか。ありゃりゃりゃりゃだなぁ」は意味が分かれば二度楽しめる名台詞!

第四弾『マクベス』

荒野の魔女達からそそのかされ、王になる野望を抱く将軍マクベス。妻と共に現王を暗殺して王位を奪うが、その地位を守るために悪行を重ね、やがて破滅の道を辿ることに……。
四大悲劇の中で最も短く、最後に書かれた作品です。
本作では、幕兵衛(マクベス/章平)や老婆(魔女/梅沢昌代)といった登場人物への関わりに加え、名台詞『きれいは汚い、汚いはきれい』が印象的な歌詞の一部にもなっています。

第五弾『ロミオとジュリエット』

代々対立関係にある一家に生まれたロミオとジュリエットは舞踏会で出会い、一目で恋に落ち激しくひかれあう。両家の長年の確執と反対の中で秘密の結婚式を挙げるが、不幸な誤解と運命の悪戯が2人を悲劇にむかわせてしまう……。
本作では、互いの家が対立関係となるきじるしの王次とお光、すれ違いの悲愛となる佐吉と浮舟太夫に、ロミオとジュリエットが投影されています。

第六弾『夏の夜の夢』

アテネが舞台の恋愛喜劇。
ハーミアとライサンダー、ディミ―トリアスの三角関係を筆頭に描かれる恋模様。妖精の王オベロンは妖精パックに"惚れ薬"を使わせて事態の収束を図るが...。
敵同士が恋に落ちる"惚れ薬"は本作にも登場します。その役割を担うのは清滝の老婆(梅沢昌代)です。

第七弾『ヴェニスの商人』

ヴェニスの商人アントーニオは友人ポーシャの求婚資金のため、「期限までに返済できなければ肉1ポンドを切り取る」という条件で高利貸しシャイロックから借金をする。
しかし全財産を投資していた船が難破し、窮地に立たされるアントーニオ。法学者に扮したポーシャが法廷で機転を利かせ、アントーニオを救い出します。
本作で取り上げられるのは本当に一瞬です。是非注目してくださいね。

第八弾『十二夜』

嵐の船難破で双子兄妹が生き別れ、妹(ヴィオラ)は男装し公爵に小姓として仕える。
公爵は伯爵令嬢に求婚中だが、公爵に恋心を抱くヴィオラは恋の手助けで伯爵令嬢の下へ。ところが伯爵令嬢はヴィオラに一目ぼれ。そこへ生き別れたはずの兄が登場し……。恋の行方は意外な方向に。
本作では意外な場面で登場します。最後まで隊長(木場勝己)の台詞をお聞き逃しなく!

第九弾『お気に召すまま』

「この世はすべて舞台」という名台詞も有名な戯曲。
ロザリンドと道化タッチストーンの軽妙な韻を踏んだやり取りが、本作では佐吉(猪野広樹)とおこま婆(梅沢昌代)の”トカトントン”で表現されています。

第十弾『じゃじゃ馬ならし』

領主が村の酔っ払いをいたずらで領主に仕立てたところに、旅芸人一座が来て芝居を見せる、劇中劇。
裕福な姉妹の姉は男嫌いなじゃじゃ馬娘で、妹は可憐で求婚者が鈴なり。父親は姉より先に妹を結婚させられないと嘆くと、妹の求婚者がある男を紹介する。その男が姉との結婚を名乗り出て、機知と勇気で従順な妻に変身させる陽気な恋のかけひき喜劇。
本作ではおみつとおさちの双子姉妹(唯月ふうかが二役)が、じゃじゃ馬ならしを彷彿とさせます。

第十一弾『ジュリアス・シーザー』

時は古代ローマ。市民からの熱狂的な支持を得ていた将軍シーザーだったが、共和制を廃し皇帝になるのではと怪しまれ、軍人ブルータスに殺される。一時は市民の理解を得るものの、シーザーの腹心アントニーの演説により市民は憤慨し、ローマは混乱に陥る。ローマから追放されたブルータスは、やがて命を落とすことになる……。
シェイクスピア悲劇の代表作の一つで、「ブルータスは立派な男だ」と繰り返しながらも彼の印象を悪くしてゆくアントニーの演説が有名で、本作では三世次(浦井健治)のセリフに落とし込まれています。

第十二弾『リチャード三世』

薔薇戦争中のイングランド。容姿が醜く背中も湾曲している白薔薇グロスター公リチャードは世の中を憎み、あらゆる非道な手を使い王座に登り詰めようと画策する。様々な計略でリチャード三世として王位に就くが、赤薔薇リッチモンドとの戦いとの前夜、自分が殺害した数々の亡霊に苦しめられたうえ、戦いに敗れ死ぬ。
三世次(浦井健治)のモデルであり、圧倒的なダークヒーローでありながら、非常に人気の高いキャラクターです。

第十三弾『リチャード二世』

シェイクスピア史劇の中でも有名な『ヘンリー四世』に直結する時代を描く本作品。リチャード二世が自分とは何かを自問自答する哲学的場面は、後の『ハムレット』の瞑想の場の原点とも言われています。
本作では、三世次(浦井健治)が追い詰められるラストシーンに反映されています。

第十四弾『から騒ぎ』

青年貴族クローディオと知事の娘ヒーローの熱愛と、男嫌い女嫌いのベアトリスとベネディクが舌合戦しながらも惹かれ合う、2組のカップルが試練を乗り越え結ばれるというシェイクスピア唯一の純正恋愛喜劇。
本作では、おこま婆(梅沢昌代)と浮舟(福田えり)の会話に反映されています。

第十五弾『ヘンリー四世・第一部』

イングランドの王・ヘンリー四世は王座を狙う反乱者たちに苦しめられている。反逆者ホットスパーが挙兵し、先代王の三男の息子を王位に就けようとするが、ヘンリー四世の嫡子ハル王子とファルスタッフに打倒される。
ハル王子が王になる為の葛藤と成長が描かれる、シェイクスピア歴史劇でも人気の高い作品。奔放なきじるしの王次(大貫勇輔)のモデルで、女郎達や子分達とのやりとりがハル王子に重なります。

第十六弾『ヘンリー四世・第二部』

ホットスパーが敗れた後も反乱は続きますが、ハル王子とファルスタッフは自堕落な生活に後戻り。ハル王子の弟の働きもあり反乱は収束しますが、喜びも束の間、心労からくる病でヘンリー四世は亡くなります。ハルがヘンリー五世として即位すると、ファルスタッフが意気揚々とやって来ますが、王としての自覚が芽生えたハルは彼を冷たくあしらい、追放を宣言しました。

第十七弾『ヘンリー五世』

百年戦争のアジンコートの戦い前夜に焦点をあて、イングランド王ヘンリー五世の生涯を描いた史劇。ヘンリー五世は若い時代(ハル王子)とは打って変わり、才智溢れ尊敬をあつめる新王に成長した。新王はフランス王位継承権を主張し、アジンコートの戦いで5倍のフランス軍を破り快進撃を続けた。ラストはフランス王女キャサリンと婚約し、イギリス・フランスの2国を手に収め平和な時代が訪れます。
本作では、ヘンリー五世のコーラス(説明役)、オイディプス王のコロス(合唱隊)の特徴と、更に天保水滸伝の講談師的な部分も兼ね備え、ストーリーテラーとして百姓隊長(木場勝己)が登場します。

第十八弾『ヴェローナの二紳士』

ヴェローナの紳士ヴァレンタインは旅の途中でミラノ侯爵令嬢シルヴィアと恋に落ちる。彼の親友プロテュースもミラノを訪れ、ジュリアといる恋人がいるにも関わらずシルヴィアに横恋慕する。山賊に捕まったシルヴィアを助けたプロテュースは力づくで彼女をものにしようとするが、ヴァレンタインが現れ、阻止・叱責する。プロテュースは心を入れ替え彼女とヨリを戻すし、ヴァレンタインも公爵の許しを得てシルヴィアと結ばれる。
プロテュースの“力”を持ってシルヴィアをものにしようとする態度は、お光(唯月ふうか)に横恋慕する三世次(浦井健治)の姿に重なります。

第十九弾『恋の骨折り損』

ナヴァラ国の若い王と友人は学問に専念するため、女性との交際や贅沢を3年間断つことを誓う。フランス王女と侍女は彼らの計画を知り、からかいつつもその思いを試そうとする。フランス王崩御の知らせにより、恋の駆け引きはお預けに。王女たちはナヴァラ王国を去ってゆく。
本作の若人の恋と言えば、佐吉(猪野広樹)と浮世太夫(福田えり)。二人の運命やいかに……。