絢爛豪華 祝祭音楽劇『天保十二年のシェイクスピア』

『天保十二年のシェイクスピア』に
織り込まれた
シェイクスピア37作品をご紹介!

第一弾『ハムレット』

父を殺され母を后に迎えた叔父への復讐、恋人を狂い死にさせ、恋人の兄が妹の仇をとる決闘の中、毒の剣で刺し違え命を落とす”人生苦行”の王子、ハムレット。それらの登場人物がきじるしの王次(大貫勇輔)、蝮の九郎治(阿部 裕)、お冬(綾 凰華)に重なります。

第二弾『オセロー』

キプロス島総督に任命された将軍オセロー。妻デズデモーナを連れて任地に赴くが、自身の待遇に不満を抱く部下イアーゴがデズデモーナの不義をでっち上げ、騙されたオセローは嫉妬のあまり妻を殺してしまう。全てが陰謀だったと知ったオセローは妻の後追い、自らの命を絶つことにー。
尾瀬の幕兵衛(章平)、佐渡の三世辞(浦井健治)、お里(土井ケイト)の3者にはオセローを彷彿とさせるシーンが……。

第三弾『リア王』

ブリテンのリア王は退位し、国の領土を三人の娘ゴネリル、リーガン、コーディリアに分け与えることに。王を一番慕うコーディリアはお世辞が言えず怒りを買い、王に勘当される。しかし、領土を譲り受けた姉二人は父を疎んじ追放する。荒野を彷徨うリア王は、フランス王に迎えられたコーディリアと再会する。
本作では、鰤の十兵衛(中村梅雀)、お文(瀬奈じゅん)、お里(土井ケイト)、お光(唯月ふうか)のモデル。物語の冒頭がオマージュとなっており、「こう出りゃそう出たか。ありゃりゃりゃりゃだなぁ」は意味が分かれば二度楽しめる名台詞!

第四弾『マクベス』

荒野の魔女達からそそのかされ、王になる野望を抱く将軍マクベス。妻と共に現王を暗殺して王位を奪うが、その地位を守るために悪行を重ね、やがて破滅の道を辿ることに……。
四大悲劇の中で最も短く、最後に書かれた作品です。
本作では、幕兵衛(マクベス/章平)や老婆(魔女/梅沢昌代)といった登場人物への関わりに加え、名台詞『きれいは汚い、汚いはきれい』が印象的な歌詞の一部にもなっています。

第五弾『ロミオとジュリエット』

代々対立関係にある一家に生まれたロミオとジュリエットは舞踏会で出会い、一目で恋に落ち激しくひかれあう。両家の長年の確執と反対の中で秘密の結婚式を挙げるが、不幸な誤解と運命の悪戯が2人を悲劇にむかわせてしまう……。
本作では、互いの家が対立関係となるきじるしの王次とお光、すれ違いの悲愛となる佐吉と浮舟太夫に、ロミオとジュリエットが投影されています。

第六弾『夏の夜の夢』

アテネが舞台の恋愛喜劇。
ハーミアとライサンダー、ディミ―トリアスの三角関係を筆頭に描かれる恋模様。妖精の王オベロンは妖精パックに"惚れ薬"を使わせて事態の収束を図るが...。
敵同士が恋に落ちる"惚れ薬"は本作にも登場します。その役割を担うのは清滝の老婆(梅沢昌代)です。

第七弾『ヴェニスの商人』

ヴェニスの商人アントーニオは友人ポーシャの求婚資金のため、「期限までに返済できなければ肉1ポンドを切り取る」という条件で高利貸しシャイロックから借金をする。
しかし全財産を投資していた船が難破し、窮地に立たされるアントーニオ。法学者に扮したポーシャが法廷で機転を利かせ、アントーニオを救い出します。
本作で取り上げられるのは本当に一瞬です。是非注目してくださいね。

第八弾『十二夜』

嵐の船難破で双子兄妹が生き別れ、妹(ヴィオラ)は男装し公爵に小姓として仕える。
公爵は伯爵令嬢に求婚中だが、公爵に恋心を抱くヴィオラは恋の手助けで伯爵令嬢の下へ。ところが伯爵令嬢はヴィオラに一目ぼれ。そこへ生き別れたはずの兄が登場し……。恋の行方は意外な方向に。
本作では意外な場面で登場します。最後まで隊長(木場勝己)の台詞をお聞き逃しなく!

第九弾『お気に召すまま』

「この世はすべて舞台」という名台詞も有名な戯曲。
ロザリンドと道化タッチストーンの軽妙な韻を踏んだやり取りが、本作では佐吉(猪野広樹)とおこま婆(梅沢昌代)の”トカトントン”で表現されています。

第十弾『じゃじゃ馬ならし』

領主が村の酔っ払いをいたずらで領主に仕立てたところに、旅芸人一座が来て芝居を見せる、劇中劇。
裕福な姉妹の姉は男嫌いなじゃじゃ馬娘で、妹は可憐で求婚者が鈴なり。父親は姉より先に妹を結婚させられないと嘆くと、妹の求婚者がある男を紹介する。その男が姉との結婚を名乗り出て、機知と勇気で従順な妻に変身させる陽気な恋のかけひき喜劇。
本作ではおみつとおさちの双子姉妹(唯月ふうかが二役)が、じゃじゃ馬ならしを彷彿とさせます。

第十一弾『ジュリアス・シーザー』

時は古代ローマ。市民からの熱狂的な支持を得ていた将軍シーザーだったが、共和制を廃し皇帝になるのではと怪しまれ、軍人ブルータスに殺される。一時は市民の理解を得るものの、シーザーの腹心アントニーの演説により市民は憤慨し、ローマは混乱に陥る。ローマから追放されたブルータスは、やがて命を落とすことになる……。
シェイクスピア悲劇の代表作の一つで、「ブルータスは立派な男だ」と繰り返しながらも彼の印象を悪くしてゆくアントニーの演説が有名で、本作では三世次(浦井健治)のセリフに落とし込まれています。

第十二弾『リチャード三世』

薔薇戦争中のイングランド。容姿が醜く背中も湾曲している白薔薇グロスター公リチャードは世の中を憎み、あらゆる非道な手を使い王座に登り詰めようと画策する。様々な計略でリチャード三世として王位に就くが、赤薔薇リッチモンドとの戦いとの前夜、自分が殺害した数々の亡霊に苦しめられたうえ、戦いに敗れ死ぬ。
三世次(浦井健治)のモデルであり、圧倒的なダークヒーローでありながら、非常に人気の高いキャラクターです。

第十三弾『リチャード二世』

シェイクスピア史劇の中でも有名な『ヘンリー四世』に直結する時代を描く本作品。リチャード二世が自分とは何かを自問自答する哲学的場面は、後の『ハムレット』の瞑想の場の原点とも言われています。
本作では、三世次(浦井健治)が追い詰められるラストシーンに反映されています。

第十四弾『から騒ぎ』

青年貴族クローディオと知事の娘ヒーローの熱愛と、男嫌い女嫌いのベアトリスとベネディクが舌合戦しながらも惹かれ合う、2組のカップルが試練を乗り越え結ばれるというシェイクスピア唯一の純正恋愛喜劇。
本作では、おこま婆(梅沢昌代)と浮舟(福田えり)の会話に反映されています。

第十五弾『ヘンリー四世・第一部』

イングランドの王・ヘンリー四世は王座を狙う反乱者たちに苦しめられている。反逆者ホットスパーが挙兵し、先代王の三男の息子を王位に就けようとするが、ヘンリー四世の嫡子ハル王子とファルスタッフに打倒される。
ハル王子が王になる為の葛藤と成長が描かれる、シェイクスピア歴史劇でも人気の高い作品。奔放なきじるしの王次(大貫勇輔)のモデルで、女郎達や子分達とのやりとりがハル王子に重なります。

第十六弾『ヘンリー四世・第二部』

ホットスパーが敗れた後も反乱は続きますが、ハル王子とファルスタッフは自堕落な生活に後戻り。ハル王子の弟の働きもあり反乱は収束しますが、喜びも束の間、心労からくる病でヘンリー四世は亡くなります。ハルがヘンリー五世として即位すると、ファルスタッフが意気揚々とやって来ますが、王としての自覚が芽生えたハルは彼を冷たくあしらい、追放を宣言しました。

第十七弾『ヘンリー五世』

百年戦争のアジンコートの戦い前夜に焦点をあて、イングランド王ヘンリー五世の生涯を描いた史劇。ヘンリー五世は若い時代(ハル王子)とは打って変わり、才智溢れ尊敬をあつめる新王に成長した。新王はフランス王位継承権を主張し、アジンコートの戦いで5倍のフランス軍を破り快進撃を続けた。ラストはフランス王女キャサリンと婚約し、イギリス・フランスの2国を手に収め平和な時代が訪れます。
本作では、ヘンリー五世のコーラス(説明役)、オイディプス王のコロス(合唱隊)の特徴と、更に天保水滸伝の講談師的な部分も兼ね備え、ストーリーテラーとして百姓隊長(木場勝己)が登場します。

第十八弾『ヴェローナの二紳士』

ヴェローナの紳士ヴァレンタインは旅の途中でミラノ侯爵令嬢シルヴィアと恋に落ちる。彼の親友プロテュースもミラノを訪れ、ジュリアといる恋人がいるにも関わらずシルヴィアに横恋慕する。山賊に捕まったシルヴィアを助けたプロテュースは力づくで彼女をものにしようとするが、ヴァレンタインが現れ、阻止・叱責する。プロテュースは心を入れ替え彼女とヨリを戻すし、ヴァレンタインも公爵の許しを得てシルヴィアと結ばれる。
プロテュースの“力”を持ってシルヴィアをものにしようとする態度は、お光(唯月ふうか)に横恋慕する三世次(浦井健治)の姿に重なります。

第十九弾『恋の骨折り損』

ナヴァラ国の若い王と友人は学問に専念するため、女性との交際や贅沢を3年間断つことを誓う。フランス王女と侍女は彼らの計画を知り、からかいつつもその思いを試そうとする。フランス王崩御の知らせにより、恋の駆け引きはお預けに。王女たちはナヴァラ王国を去ってゆく。
本作の若人の恋と言えば、佐吉(猪野広樹)と浮世太夫(福田えり)。二人の運命やいかに……。

第二十弾『テンペスト』

嵐を意味するテンペスト。ミラノ大公プロスペローは弟の策略により地位剥奪追放となって娘ミランダと共に、孤島に流れ着く。秘術を身に着けたプロスペローは魔法の力でテンペスト(嵐)を起こし、弟らの乗った船を孤島に流れ着かせる。計画通り、乗船していた王子と娘は恋に落ち、厳しい結婚の条件もクリアする王子。復讐劇を繰り広げたつもりのプロスペローだったが、娘の幸せを見届けると復讐を思いとどまり、弟らを許すことに。ラストはあたたかな拍手で魔法の力を解き、自分を自由の身にして欲しいと観客に懇願して委ね、幕が降りる。本作では、三世次(浦井健治)とお光(唯月ふうか)のセリフに反映されています。

第二十一弾『間違いの喜劇』

エフェソスの二組の双子、アンティフォラス兄弟と使用人のドロミオ兄弟。幼いころに生き別れた双子は異なる街で成長し、無意識のまま同じ町に行きつく。勘違いや恋愛関係が交錯することで様々なトラブルに巻き込まれますが、兄が逃げ込んだ尼僧院で行方不明の母と出会う。家族は再開し恋愛関係も解決、ハッピーエンドを迎える。
喜劇ではありますが、アイデンティティがテーマの作品。本作では生き別れたお光と双子姉妹(どちらも唯月ふうか)がまさにこの作品をもとにしています。

第二十二弾『アントニーとクレオパトラ』

舞台は紀元前のローマとエジプト。ローマの三頭政治を担うアントニーは、エジプトの女王クレオパトラに心を奪われ、豪華な生活を楽しんでいた。しかし、正妻が死に政情が不安定になるとローマにもどり、同じく三頭政治を担うオクテイヴィアス・シーザーの姉と結婚する。これを知ったクレオパトラは激怒する。
シーザーが権力を握り始めると、アントニーは妻を捨てクレオパトラと挙兵し対抗するが、敗北を喫する。敗戦の要因が自身にあると感じたクレオパトラは恐れをなし、自分が死んだことにして身を隠すが鵜吞みにしたアントニーは絶望し、自害を試みる。クレオパトラは泣きながら彼の死を見届け、自らも毒蛇に身を委ね死を選ぶ。
本作では、恋人関係にある佐吉(猪野広樹)と浮舟太夫(福田えり)に反映されており、二人の恋愛がどのような末路をたどるのか、ご注目ください。

第二十三弾『冬物語』

シチリアの王レオンティーズは、妻のハーマイオニと親友のボヘミア王ポリクシニーズの密通という不義の疑惑(物語)に嫉妬に狂う。しかし侍女ポーライナからの王妃ハーマイオニの死の知らせが届き人としての心、後悔と悲嘆(冬)にくれる。
時はうつり16年後。ボヘミアにて羊飼い娘として育てられたレオンティーズとハーマイオニの娘バーディタはポリクシニーズの息子であるフロリゼルと恋に落ちる。この事がきっかけで断絶状態にあった、レオンティーズとポリクシニーズの友情も復活、そしてハーマイオニの死を悼むレオンティーズの前で侍女ポーライナはハーマイオニを蘇らせて一同は再開、驚くべき真実が明かされる―。
本作では、お光(唯月ふうか)が捨て子である設定や隊長(木場勝己)が時空をコントロールする場面などに反映されています。

第二十四弾『コリオレイナス』

古代ローマの軍人・コリオレイナスは多くの戦争で活躍し、英雄と讃えられていた。
しかし平和が戻ると、彼の冷徹で高慢な性格は市民に疎まれ、政治的な対立からローマを追放される。彼はその復讐に敵方と手を組みローマに攻め入る。
母、そして妻の説得により攻撃を止め和平を結ぶも、手を組んだ敵方に裏切り者として暗殺されてしまう。
本作で反映されているのは佐吉(猪野広樹)と母のおこま婆(梅沢昌代)。息子を想う母の行動が逆に息子を死に招く結果となる皮肉として描かれています。

第二十五弾『シンベリン』

舞台は古代ブリテン。王シンベリンの娘イノジェンが、父の意向に反して貴族ポステュマスとひそかに結婚すると、激怒した王はポステュマスを国外追放。ローマに渡ったポステュマスが妻の自慢をするあまり、伊達男ヤーキモーは彼女の貞節を巡る賭けを持ちかける。
ヤーキモーはブリテンでイノジェンを口説こうとするものの上手くいかず、寝室に忍び込んで彼女の腕から腕輪を抜き取り、ローマに戻る。腕輪を見せられたポステュマスは絶望し、部下に妻の殺害を命じるが――。
本作では、妻に裏切られ女性を呪ってしまうポステュマスの姿が、きじるしの王次(大貫勇輔)に反映されています。

第二十六弾『終わり良ければすべてよし』

前・伯爵の主治医の遺児であるヘレナは現・伯爵のバートラムに想いを寄せているが身分違いで打ち明ける事ができない。しかしフランス王の難病を治療し、夫を選ぶ権利を手にしてバートラムと結婚する。だが、バートラムはヘレナを嫌い他の女を口説く始末。それでも思いを寄せるヘレナに対し、バートラムはこれまでの仕打ちを謝り、ヘレナを愛することを誓う。そして王が幕切れで口上役となり「終わり良ければすべてよし」と観客に拍手をねだり、芝居は幕切れとなる。
本作では、身分違いの恋をするきじるしの王次(大貫勇輔)とお光(唯月ふうか)が重なります。

第二十七弾『尺には尺を』

ウィーンの公爵ヴィンセンシオは副官のアンジェロに治世を任せ、自らは修道士に変装し、その政治ぶりを見守る。厳格なアンジェロは厳しい統治を行うが、美しさに惹かれ、罪人を許すことを条件にその妹イザベラに迫る。公爵として宮廷に戻ったヴィンセンシオはアンジェロを死刑とする。イザベラらが命乞いをし、公爵は全てを赦し最後に公爵がイザベラに唐突な求婚をして劇は終わる。
本作では、イザベラと幕兵衛(章平)の台詞が対応しています。

第二十八弾『ペリクリーズ』

中世の詩人ガワーの霊がよみがえり、古き話を語りだす。ティルスの領主ペリクリーズは求婚しようとしていた王女の秘密を見抜き、旅に出る。嵐で遭難したペンタポリスに流れ着き、王の娘タイーサと結ばれ、娘マリーナが誕生。出産の際にタイーサは亡くなるも、海に流した棺がエフェソスにたどり着き、医師の力でタイーサは息を吹き返す。一方、マリーナは海賊に誘拐されてしまう。失意のペリクリーズは再び旅に出るが、マリーナと偶然再会。神の導きでタイーサとも再会し、最後は大団円を迎える。
本作では、隊長(木場勝己)の台詞に詩人ガワーの台詞が反映されていたり、死んだと思われていたお光(唯月ふうか)が戻ってくる設定がペリクリーズから反映されたりしています。

第二十九弾『アテネのタイモン』

アテネの裕福な貴族であるタイモンは非常に気前がよく、知人や困窮者に金を与え、宴会を頻繁に開催していた。莫大な借金を抱えた彼は、かつて恩を施した人に助けを求めるが誰も彼に手を差し伸べない。本当の友が一人もいないことに絶望したタイモンは人間社会を呪い、世捨て人として森の洞窟に住む。かねてからタイモンの友人だった軍人アルキビアデスが、恩赦を願いでるも追放される。アルキビアデスはアテネに復讐を決意し挙兵。最終的にアテネは降伏し、アルキビアデスは復讐を果たすが、そこへタイモンの訃報が届き、劇が終わる。
本作では、人間社会に絶望したタイモンが盗賊に金貨を投げつける姿が、富を手に入れたのちの三世次(浦井健治)に重なります。

第三十弾『トロイラスとクレシダ』

“トロイの木馬”で有名なトロイア戦争中のトロイとギリシャが舞台。トロイの王子トロイラスは神官の娘クレシダと愛しあうが、彼女の父がギリシャ側についた為、クレシダもギリシャにわたり、そこで武将ディオメデスにも心惹かれてしまう。トロイラスは激怒し、ギリシャに攻め込むがディオメデスを打ち倒せない。“問題作”と言われるこの物語は、トロイの暗い未来を暗示するところで終わってしまう。
本作では、三世次(浦井健治)の1幕終わりの捨て台詞に反映されています。

第三十一弾『タイタス・アンドロニカス』

ローマ将軍タイタス・アンドロニカスは捕虜であるゴート人の女王タモーラの長男を殺し、戦士した我が子たちへの生贄にする。これを恨んだタモーラの息子たちは、タイタスの娘ラヴィニアや息子に復讐する。全てはタモーラの仕業と知ったタイタスはゴート軍と結託してローマを攻める。復讐が連鎖する、シェイクスピア作品の中で最も暴力性、残虐性にあふれた復讐劇。
本作では、三世次(浦井健治)とお光(唯月ふうか)の関係が、タモーラの息子とラヴィニアの台詞等で反映されています。

第三十二弾『ヘンリー八世』

イギリス国王ヘンリー八世の宮殿では汚い政治的策略で出世した枢機卿ウルジーが、絶大な権力をふるっていた。ウルジーが開いた宴会で女官のアンに出会った国王は、彼女の美しさに魅了され王妃キャサリンと離縁しようとする。アンが出世の邪魔になると考えたウルジーはローマ法王に手紙を送るが、この手紙が誤って王の手に渡ってしまう。ウルジーが国の財産を着服していたことが発覚し、激怒した王によりウルジーは失脚。キャサリンとの離縁が決まり、アンが新王妃となる。
『ヘンリー八世』に狂言回しとして登場する“三人の紳士”が、本作の隊長(木場勝己)と重なります。重税を強いて民衆の反感を買うウルジーの姿が三世次(浦井健治)に反映されています。

第三十三弾『ウィンザーの陽気な女房たち』

イギリスのウィンザーが舞台。酒好き女好きで財産を持たない中年の騎士・ファルスタッフは裕福な商人の妻、フォード夫人とページ夫人の2人からお金を取ろうと画策。2人の夫人に同時に恋文を送り騙そうとするが、2人の夫人はファルスタッフの計略を見抜き、逆に数々の策略をめぐらし彼を懲らしめる。
本作では、佐渡の三世次(浦井健治)が尾瀬の幕兵衛(章平)に“嫉妬”という毒を全身に回していく場面がフォード夫人の夫に嫉妬させる場面などに重なります。

第三十四弾『ジョン王』

13世紀のイングランド。王位を巡り、ジョン王と甥のアーサーが対立。アーサーの母コンスタンスとフランス王のフィリップがアーサーの王位を主張し、イングランドとフランスは戦争を始める。ジョン王の姪・ブランチとフランス皇太子ルイとの結婚で和平が成立するかに見えたが、コンスタンスが反対し、戦争が再燃。ジョン王はアーサーを捕え、処刑しようとするがジョン王の過信はそれを躊躇し、アーサーは逃亡中に誤って命を落とす。
本作中の楽曲「三世次のブルース」に、コンスタンスの台詞が生かされています。
♪愛するは憎む、憎むは愛する…

第三十五弾『ヘンリー六世・第一部』

百年戦争終盤が舞台。フランスでの戦況とジャンヌ・ダルクの活躍、イギリス国内での不穏な動きが描かれる。
ヘンリー六世が幼少の為、実験は貴族たちが握っており、白薔薇ヨーク家vs赤薔薇ランカスター家が争う薔薇戦争の始まりが描かれる。
『天保十二年のシェイクスピア』の佐渡の三世次(浦井健治)に投影されたリチャード三世にも繋がる、とても縁のある作品です。

第三十六弾『ヘンリー六世・第二部』

物語の中心となるのは、マーガレット王妃の登場により激化する宮廷内での派閥争い。
妃をフランスから連れてきた愛人のサフォーク伯は枢機卿らと陰謀を企み、対決する摂政グロスター公を暗殺する。悲しむ王はサフォークを追放し、妃はサフォークと嘆きながら別れる。枢機卿は病で悶死し、サフォークも非業の死を遂げる。
平民たちの間で不穏な空気が広がる中、ひそかに王位を狙うヨーク公は暴徒ジャック・ケイドにイギリスで叛乱を起こさせると同時に、逆賊サマセット公の成敗を名目にアイルランドから挙兵し、薔薇戦争が勃発。ケイド、サマセットは倒され、王と王妃は逃亡。ヨーク側の圧倒的な勝利で第二部は終了する。
本作では、夫のヘンリー王を心の内で見限り、サフォークに心を傾けていく妃の姿が、お文(瀬奈じゅん)、お里(土井ケイト)に反映されています。

第三十七弾『ヘンリー六世・第三部』

百年戦争とそれに続く薔薇戦争により疲弊したイングランドで、歴史に翻弄される王ヘンリー六世と王を取り巻く人々を描く長編史劇三部作の最終章。ヨーク公リチャードが息子エドワード、ジョージ、リチャードと共にランカスター朝から王位を奪う為に戦うところから物語は始まる。第三部は前二作に比べてより残酷な描写も多く、権力闘争の醜さや人間の残忍さを容赦なく描きだすことで、戦争の悲惨さを浮き彫りにした作品となっています。
リチャード三世の姿は、佐渡の三世次(浦井健治)に重なります。